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田村:2回目で、いきなり重い話ですね。
永井:自分の家で死ぬ。数十年前は8割以上の方が自宅で亡くなっていましたが、現在は1割台に過ぎません。ほとんどの方が病院で亡くなっているのです。
田村:体調が悪くなって病院に行って、そのまま入院して、そこで死んでしまうという、いわば「死への道筋」が決められている気がします。家で死にたいなんて、患者も家族も言える雰囲気じゃないような。
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永井:医療機関の人間ですら、そう考えている人がいますからね。「こんな状態で連れて帰るなんて、あなたはお母さんを殺すつもりですか!」と言われたご家族さんもいるんですよ。
田村:ひえ〜っ その患者さん、治療が必要な状態だったわけではないんですよね。
永井:ある総合病院に入院されていた82歳の女性で、胃癌の末期でした。患者さん本人もご家族も、自宅で死にたい、看取りたいと思っていて、そのことを伝えただけなのに、殺人でもするかのように主治医に言われたそうですよ。
田村:苦しいときこそ、自分の家に帰りたいと思うものなのに。ある意味、人として当たり前の希望に対して、そんなふうに言われるとたまらないですね。
永井:医療機関の人間も、もっと勉強しなくてはならないと思いますよ。いまだに、「自宅で死んだら、警察を呼ばなければいけない。警察沙汰になるよ」と言う先生がいるという話ですから。
田村:そんなことをお医者さんから言われたら、自宅に連れ帰るなんて絶対ムリというか、いけないことのようにさえ思うでしょうね。で、先生、確認ですけど、自分の家で死んでもいいんですよね?
永井:当たり前ですよ!!
田村:それを聞いて、安心しました。ところで、その「お母さんを殺すつもりですか!」と言われたご家族と患者さんは、どうされたのですか?
永井:インターネットでウチのことを調べたそうで、連絡がありました。「家で診ていただけますか」と訊ねた娘さんは、電話口で泣いていらっしゃったそうです。
田村:お家に連れてかえることができたのですね。
永井:ええ。自宅で、ご主人と息子さん、二人の娘さん、お孫さんたちの手厚い看護を受けて、少量ですがごはんも食べられるようにまでなったんですよ。
田村:自宅に帰ったことで、逆に体調が良くなったんですね。
永井:その上、「孫の結婚式に出たい」という希望も口にするようになったんです。栄養状態をよくしたことで、落ち着いた時間を過ごせることができるようになって、ご本人にも精神的な余裕が生まれたのでしょうね。
田村:生きるか死ぬかという状態にあった家族が、体調を戻し、その上、生きる希望まで取り戻してくれるなんて、看病をしている家族にとっても嬉しいことですね。
永井:その方は自宅で1ヶ月を過ごされて、亡くなりました。結局は、お孫さんの結婚式に出席することはなかったのですが。それでも生きる希望を持ち、自宅で家族と過ごせた時間が持てたということは、ご本人はもちろんご家族にとっても癒しであったと思いますよ。自宅で療養し、そして亡くなるということは、ご本人にもご家族にも、死への準備、死への受容ができるようですね。
田村:いわゆる「癒された死」を迎えることができるということでしょうか。
永井:家族を失った人にとって、「癒された死」などというのはないのかもしれませんが・・・。それでも、思い出がいっぱい詰まった我が家で看病をし、一緒に過ごす時間の中で、家族の方も徐々に死を受け入れていき、大切な人を亡くす悲しみを少しでも和らげられたらいいなと思いますね。
田村:ところで、先生。そうは言っても、人間のことですからイロイロありますよね。患者さん自身も家族も、もしも自宅での療養がイヤになってしまったら、どうしたらいいんですか?
永井:入院でも、ホスピスでも好きなところへ移ればいいだけですよ。最後を決めたら、これしかないというわけではないんです。そのためのネットワークも作っています。自宅から病院、病院からホスピス、そしてまた自宅。逆にホスピスや病院にいて、ちょっとの期間だけ自宅に帰りたい、その間だけ自宅でも医療を受けたいというのも可能です。患者さんが主体なのですから、患者さんが望むところに行けるんですよ。
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