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コラムNO4 在宅で出会った人々 その2 医師 岩政喜久恵「心に残る患者さん」
岩政喜久恵
医師 岩政喜久恵

 医師になって22年の中で一番心に残る患者さんは、なんと、私の父です。父が71歳で死去して5年が経ちました。彼の死後、年老いた患者さんやその家族の方と関わる時に、常に自分の心の中で他界した父の存在を感じます。おそらく、こんな自分の思いが、知らずとたんぽぽクリニックでの訪問診療のお手伝いへと導いてくれたような気がします。そんな訳で今回は父のことをお話します。

 父は死去する半年前に脳梗塞に倒れました。命は取り留めて家族がホッとしたのもつかの間、半身不全麻痺と認知症が残りました。麻痺が良くなっても、夜間せん妄は改善せず、病院では夜間の家族の付き添いを要求され、挙句の果てに病院大脱走事件と相成りまして、自宅での介護が始まりました。自宅での介護は、結果的にはたった2ヶ月でしたが結構大変でした。その頃はまだまだ介護保険が始まったばかりだったので、先行き何時まで続くか見えない介護生活にすごく不安を感じていました。介護する母が日々消耗していくのを感じながらも、その頃自分は、大学病院で病棟主任を任されており、責任の多い仕事のため、心身共に消耗していて、母の話を聞くのが精一杯。手助けする気力も体力もない状態でした。このままじゃ母も私も倒れる。思いつめて、自分が大学病院勤務を辞めて、父の介護を手伝おうと一大決心して大学病院に辞表?を出した直後に、父は肺炎で再入院となり、入院後1ヶ月で父はあっけなく逝ってしまいました。元気なときには父は家族に散々迷惑かけてばかりだったのに(悪口言ってゴメンね、父ちゃん)、『最期はおまえら家族には迷惑かけん』と言うがごとき、潔いというか?あっけなく父は逝ってしまいました。自分は気持ちの整理が付かなくて結局大学病院は辞めて、フリータードクターの道に入りました。

 医師という立場で、父の闘病と死に向き合うことはかなり辛かったです。医療現場を知っているからこそ、肉親を特別扱いにさせるのは嫌で、思い悩み、逆に父や家族に我慢させたことも一杯ありました。思い出すと、今でも言い知れぬ自責の念で心が痛くなります。しかし、今、父の死を経験してやっと一人前?の医師になれたような気がしています。『肉親の闘病と死に立ち会う家族』の思いは『経験しないと分からないもの』だと思い知らされました。特に認知症の介護が家族にとって如何に大変かも教えられました。父の死は私にとっては、医師として人間として、自分の生き方、あり方を考える一番の教科書だったと思います。父に感謝!私が立派な人格者であるべきお医者さんとなるのはまだまだだけど、患者さんと家族の気持ちが理解出来るお医者さんであろう日々心がけて、皆さまと向き合っているつもりです。今後とも宜しくお願いしますね。

   
 
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