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院長 永井康徳 |
以前、癌末期の65歳男性の方で、今日、退院したいという人がいるのですがみてもらえないかという電話が病院の先生からありました。病院と準備を進めて、退院し、訪問しようとすると、家族は来てほしいというのですが、本人は医者が来るのを嫌がっているというのです。結局、退院の日は訪問できず、本人を説得して2日後にようやく訪問することができました。私は最初、なぜ、本人が医者が家に来ることを嫌がっているのかわかりませんでした。訪問したときに、私は本人に「あなたを楽にするために来ましたよ」と話しかけました。すると、本人は特に拒否するわけでもなく、「お願いします」と言われました。後でわかったのですが、ご本人はタバコやビールが好きで、命が残りわずかであることを知り、タバコもビールも飲めない病院で最期を迎えたくなかったのです。それで、家にすぐ帰りたいと言って、さらに医者が家に来ると、また病院と同じようにタバコやビールを制限されると思ったのでしょう。病院とは違い、自宅は自分の生活の場所です。仮に状態が悪くなったとしても、承知の上であれば、最期は自分が好きなようにさせてあげたらよいのではないでしょうか?それが在宅のよさでもあります。
この患者様は、食事がたべられなくなっても、タバコとビールはかかしませんでした。息子さんと奥さんの献身的な介護を受け、2週間の短い間でしたが、ご自宅で最期を迎えられました。亡くなられた後に訪問したとき、息子さんがそっとタバコに火をつけ、「おやじ、もうタバコは吸えんのよなあ。」といって、ご本人の口にくわえさせていたのが印象的でした。
最期は本人が“やりたいように”していいと思います。私たちは、ご本人とご家族が“楽になるように”最優先してかかわらせていただきます。そして、いろんな選択肢を提示しながら、亡くなられた後に“後悔しないように”できることが一番だと思います。

最期にご本人とご家族が選択した結果が正解だったと言えるよう、私たちも精一杯かかわらせていただきます。やりたいように、楽なように、後悔しないように・・・。終わりよければすべてよしです。