先日、温州みかんを食べた時のこと。
思いのほか酸っぱかったので「ハズレかな」と心の声とも独り言ともつかない感じで呟いたのですが、
同時に、ふと懐かしい気持ちになりました。
近年、品種改良が進んで「紅マドンナ」や「せとか」「甘平」と云った、
甘くてジューシーで、中の薄皮もそのまま食べられる、スイーツと言っても過言ではない柑橘がたくさん登場しており、
贈答用としても人気があります。
私も、ときどき自分へのご褒美と思いながら、ちょっと高級なそれらの品種を楽しんでいます。
他方で、愛媛県民にとってシンボルとも言える温州みかんは、
「買うものではなく貰うもの」と言えるくらい、様々な方からいただきます。
ゆうの森でも、季節がくると患者様やご利用者様から、
段ボール箱一杯のみかんをよく頂き、職員皆でありがたく頂いています。
その中には甘いものもあれば、酸っぱいものもあります。
酸っぱいみかんを食べたときに懐かしく感じたのは、
小さな子供の頃、甘いみかんを当てるまで何個も食べては、結局酸っぱいみかんばかりだったとか、
そんな日常の小さな思い出が甦ったからでしょう。
ときどき当たる甘いみかんは格別なものでした。
酸っぱいみかんもまた、冬の到来を告げてくれたし、
かつてジュースといえば、あの丁度良い酸っぱさのポンジュースでした。
果物に限らず、効率的に甘いもの、美味しいものが食べられる時代になり、
人々の嗜好も変化すれば、無くなっていく味もたくさんあることでしょう。
ゆうの森では、食べることが不自由になった方々への支援に積極的に取り組んでいますが、
「思い出のあの味をもう一度」と希望される方もたくさんいらっしゃいます。
食べることの幸せは、甘みやうま味の度合いがもたらしてくれるものではなく、
いつ、誰と、どんな風にその味に出会えたか、といった人生の1ページなのでしょう。
調理師でも、管理栄養士でもない者が何を語っているのでしょうね(笑)。
楽しいことや幸せなことよりも、我慢したり辛いことの方が多い日々が続きますが、
(意味が違うでしょうが)酸いも甘いも、どちらも味わえる幸せを忘れずにいたいです。
Written by 事務 M