たんぽぽコラム

在宅クリニック運営のノウハウ

著者:永井康徳

  

第13回 採用試験の時、面接で見極めるには?

改めて言うまでもなく、優秀な人材の確保と定着は組織発展の要だと思います。優秀な人材を採用するために、私たちでも試行錯誤を重ねてきました。今回は採用フローについて紹介したいと思います。

たんぽぽクリニックでは、即戦力となる人材を求めているために、人材採用は経験者が対象となります。当初の採用フローは、書類選考 → 一次面接 → 二次面接 → 適性検査という一般的なものでした。しかし現在は、見学(希望者のみ)→ 書類選考 → 一次面接 → 診療同行&二次面接というフローにしています。見学と診療同行を追加して、適性検査を省いた形です。

見学と診療同行を組み込んだ理由は、とにかく応募者の人柄を知りたいと考えたためで、反対に適性検査では、こちらが望む能力や資質は図れないと考え、取りやめたのです。
我々が望む人材は、専門知識やスキルもさることながら、在宅医療に対する情熱、モチベーションが高く、人を気遣える優しさと想像力を持ち合わせ、仲間として一緒に働きたいと思える人物です。そのため、採用フローでは、とにかく応募者の「人となり」をじっくりと知る機会を作りたいと考えました。
面接という限られた場所と時間では、応募者の本来の性格や本音部分でのモチベーションを見定めることは難しいというよりも、不可能だと思います。面接試験では、応募者は緊張のため受け答えがぎこちなかったり、質問を予測して模範回答を用意していたりするため、応募者の本来の姿は見えにくいと思います。そうであれば、応募者の普段の様子を知り得る機会を作ろうと考えたのです。

一次面接を通過した応募者には、以前であれば私自身が面接を行う二次面接(理事長面接)を時間をかけて行った後に適性検査を実施して、最終判断をしていました。しかし、現在では、この二次面接と同日程で「理事長の訪問診療同行」を行います。午前中に診療同行をし、昼食を挟んで午後に面接を行うというスケジュールです(表1)。診療同行、二次面接(理事長面接)を経て、最終判断をします。
この日は、1日をかけて応募者の人柄を見ることに重きを置きます。訪問診療同行では、患者宅での挨拶や声掛けの様子、同行職員への気遣い、移動中の車内での会話などから、人への気遣いの様子や仕事に対する考え方、そして人柄が伝わってきます。さらに昼食では、人事採用担当でもある専務理事が食事を共にし、世間話をしたり、応募者からの質問に答えたりしながら、入職への不安を解消しつつ、応募者の人柄を知る機会にもしています。このような時間を持つことで、面接では知り得ない応募者の姿を知ることができると考えています。そのため、午後の理事長面接では確認程度の質問で済み、私の面接は実質15分位と短時間で終わらせられています(他の理事が引き続き面接は行っています)。

書類選考の前に、希望者には職場見学をしてもらいます。特に医療職には、問い合わせを受けた段階で、なるべく見学をしてもらうように働きかけています。とういのも、面接の前に見学に来ようかという人は、仕事へのモチベーションが高く、当方に強い関心を抱いているケースが多いからです。そして、応募前ということもあって、見学では普段どおりの気軽な感じで話せるので、本人の人柄が見えやすいのです。また、見学者にとっては、仕事の現場や職場環境、職員の様子を実際に見たり、あるいは我々が語る理念や思いを直接聞いたりすることで、この職場で働きたいという気持ちを具体化し、入職の気持ちが決定づけられるようです。逆に、在宅医療にそこまで興味をもっていなかったり、我々の期待する人物像と異なるケースなどは、いわば事前にチェックできるわけであり、相互のミスマッチを防ぐ効果もあると思います。
見学から入職に至る採用は、応募者も当方も満足度が高いケースが多いと思います。ただ、採用までに時間がかるという欠点があるため、急な採用が必要な時には導入できず、そのような時間をかけられない採用では、ミスマッチ等から双方の満足度が下がることもあります。できれば、採用は計画的に行い、じっくりと時間をかけて応募者と採用者側がお互いをよく知り、入職に至れるのが理想的です。

〈3つのポイント〉
①面接だけで、応募者の人柄を見極めることは、ほぼ不可能
②応募者の普段の様子や性格を見られる機会を採用フローに取り入れよう
③応募前の職場見学は、応募者と採用側のミスマッチを防ぎ、お互いに満足度の高い採用につながる

(表1)

採用フロー ポイント
見 学

希望者のみ対象。求職の問い合わせがあれば、まずは職場見学を勧める。随時見学が可能であることをHPで告知しておく。

書類選考

学歴・経歴、取得資格など、こちらが望むものと合致するかをチェック

一次面接

応募者が希望する部署の責任者と理事数人が面接行うが、この面接では応募の動機や職務経験、スキルなど職務遂行に問題がないかを中心に確認する。 評価基準がぶれないように評価シートを作成し、同様の基準で評価できるように工夫している。

訪問診療同行&二次面接

午前中に理事長の訪問診療に同行、昼食を挟んで二次面接(理事長面接)を実施する。二次面接では、在宅医療や当法人への具体的な興味や前向きさ、協調性に問題はないかなどを注視する。

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