著者:永井康徳
在宅患者を増やすうえで最も基本かつ重要なのは、一人ひとりの患者を丁寧に診る姿勢であり、そのためには紹介元となる関係施設との信頼関係構築が不可欠です。地域の特性やニーズを把握し、自院の強みや競合状況、訪問エリアなどを踏まえて戦略を立てる必要があります。
紹介元は医療機関が最も多いですが、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション、患者本人など多岐にわたるため、施設ごとの特徴に合わせたアプローチが求められます。特に信頼関係構築の鍵となるのが、関係施設への訪問です。当院ではスタッフが定期的に訪問し、情報交換や自院の取り組み紹介を行っています。訪問時には営業的な印象を与えないよう、患者情報の共有や研修情報の提供など、明確な目的を持って行動しています。
居宅介護支援事業所には医療職だけでなく事務職員も訪問し、法人全体で在宅医療に取り組む姿勢を示しています。こうした活動により、紹介数の増加が確認されているのです。
また、地域専門職向けに「流石cafe」という研修会を年3回実施し、在宅医療や介護の知識・スキルの向上を図っています。これは職種の垣根を越えた学びの場であり、地域でのネットワークづくりにも貢献しています。
さらに、広報活動にも力を入れており、定期発行している「ゆうの森新聞」は、地域の医療機関や施設、患者・家族に配布し、当院の活動を広く周知しています。市民公開講座の開催や、YouTubeなどSNSを活用した情報発信にも取り組んでおり、視覚的な説明で患者・家族に安心感を与えています。動画では事例紹介やFAQの解説を行い、不安解消を支援しています。
これら一連の取り組みは、単なる情報発信にとどまらず、地域との信頼関係構築、在宅医療に対する理解と協力体制の醸成、そして当院の認知度向上と継続的な集患につながっていると思います。