著者:永井康徳
在宅医療をやっていると、「患者さんをどうやって増やしたらいいか」と必ず聞かれます。特に多いのが、訪問診療の患者さんのほとんどが施設の患者さんで、自宅の患者さんがなかなか増えないというクリニックです。
結論から言うと、患者さんが来る道は3本しかありません。この3本の道を、それぞれ意識して整備することが答えです。
指標の話
その前に、ひとつ。「何を目標にするか」です。
私がグループの各拠点にお願いしているのは、「在宅患者の純増」を最重要目標にすることです。
「純増」というのは、「新規紹介患者数」から「離脱患者数」を引いた数です。在宅は看取りや入院で必ず患者さんが減っていきます。だから新規が月10人あっても、10人減れば増えていないのです。
目標は、まず月5人の純増。次に月10人。これを毎月の報告で確認する。数字にして、全員で見る。ここからすべてが始まります。
経路① 病院からの退院
病院に入院している患者さんを、施設ではなく自宅に帰す。これが一番太い道です。
ただ、ここには大きな落とし穴があります。病院では「退院=施設」が既定路線になっていることが多いのです。自宅に帰るという選択肢が、そもそも検討されていません。
だから在宅側が病院に入っていく必要があります。具体的には、退院前カンファレンスを早く、複数回開くこと。そして在宅医や訪問看護師が病院連携室と連携して、病院の医師や看護師に在宅でのイメージを持ってもらい、「この人は家に帰れますよ」と一緒に見ていくことです。
自宅に帰れるかどうかを決めるのは、病気の重さではありません。「帰れる」と言ってくれる人がいるかどうかなのです。
経路② 地域からの紹介
ケアマネジャー、訪問看護ステーション、地域の開業医の先生方。この人たちが「困った患者さんがいる」というときに、真っ先に当院を思い出してもらえるかどうか。
ここで大事なのは、医師が個人でやっている顔つなぎを、組織の機能に変えることです。
院長が頑張って挨拶回りをしているというクリニックは多いのですが、院長が忙しくなった瞬間に止まります。だから各拠点に「在宅医療連携室」をつくる。最低でもMSW1名と看護師1名。
この連携室が、紹介元を定期的に訪問して関係をつくり、初診前の情報収集や契約の説明まで担うと、医師は診療に集中できます。紹介する側も、窓口がはっきりしているから紹介しやすいのです。
そして、連携室は「理念を理解して、外とつながる部署」です。ここに所属することが出世コースになるようにして、優秀な職員が集まるポストにする。私はそこまで考えるべきだと思っています。
経路③ 本人・家族からの直接相談
書籍、YouTube、SNS、講演、地域の勉強会。こういう発信を見て、「ここに診てほしい」と家族が直接電話をかけてくる。実は当院では、この道が年々太くなっています。
これは一朝一夕にはできません。しかし、良い在宅医療をして、それをきちんと発信することを続けていれば、必ず育つ道です。そして、この道から来る患者さんは、最初から当院の理念を理解してくれている。だから一番いい関係で始まります。
終わりに
前述のとおり、患者さんが来る道は3本。
① 病院からの退院
② 地域からの紹介
③ 本人・家族からの直接相談
この3本を、院長の個人プレーではなく、連携室という組織の機能で整える。そして、純増の数字を毎月みんなで見る。
施設患者ではなく、自宅の患者さんを増やす。それが在宅医療の本来の姿だと思っています。