著者:永井康徳
2026年2月13日に、2026年度診療報酬改定の個別改定項目が厚労省から発表されました。
今回はこの改定の中から、私たち在宅医療に関わるすべての方にとって重要なポイントを、わかりやすくお伝えしていきます。
結論から言いますと、今回の改定は、「質で勝負する在宅医療機関」にとって明確な追い風です。
重症患者さんをしっかり診る体制への報酬が大幅に増える一方で、量を中心とした不適切な算定には厳しいメスが入りました。真に患者さん中心の在宅医療を実践している医療機関にとっては、相対的な評価が大きく高まる改定だと思います。
3つの方向性
今回の在宅医療関連の改定は、大きく3つの方向性に整理できます。
1.「攻め」の評価強化
重症患者さんを積極的に診る在宅医療機関への報酬がドンと増えました。頑張っている医療機関が、きちんと報われる方向です。
2.「守り」の適正化
集合住宅や施設を中心に「量」で稼ぐモデルへのメスが入りました。これまでグレーゾーンだった部分にも、厳格な基準が設けられています。
3.多職種連携とICT
チームで在宅医療に取り組む体制と、ICTを活用した情報連携の仕組みが、さらに充実しました。
この3つの方向性を見ると、厚労省のメッセージは非常に明確です。
「質の高い在宅医療をチームで届ける」──これこそが、これからの在宅医療の姿だということです。
それでは、たんぽぽ先生が独断で選ぶ2026診療報酬改定在宅医療インパクトランキング1位の発表です。
私が最もインパクトが大きいと考えるポイント
「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」が「在宅医療充実体制加算」に名称変更され、しかも加算点数が軒並み2倍に引き上げられました。
これは本当に大きい改定です。
名称の変更
「緩和ケアの充実」から「重症在宅患者への高品質な医療提供体制」へと、施設要件の概念が大きく拡がりました。
つまり、がんの緩和ケアだけでなく、重症の在宅患者さん全般をしっかり診る体制があれば、この加算の対象になり得るということです。これは対象医療機関が拡大する可能性を秘めています。
点数
具体的な数字を見ていきましょう。
在宅ターミナルケア加算は、1,000点から2,000点へ。プラス1,000点、つまり2倍です。 往診料加算は100点から200点へ、これも2倍。在総管加算(単一建物1人)は400点から800点へ、プラス400点。
在宅療養実績加算1(750点)と加算2(500点)は据え置きですので、最上位の「充実体制加算」を取得できる在支診と、そうでない在支診との差が大きく開くことになります。
収入へのインパクト
では、実際の収入にどれくらい影響するのか、シミュレーションしてみましょう。
例えば、年間看取り50件の在支診の場合。 ターミナルケア加算の充実体制加算だけで、1件あたりプラス1,000点。 年間50件なら、この加算だけで年間約50万円の増収になります。
在総管の加算も2倍ですから、患者数が多いほど累積効果は絶大です。 例えば、単一建物1人の患者さんを100人管理している場合。 月額プラス400点×100人で、月4万点、つまり月40万円の増収。年間にすると480万円です。
これは経営的に見ても非常に大きなインパクトです。
実務的にやるべきこと
では、私たちは今、何をすべきか。
第一に、施設基準の確認と届出の準備です。 現在「在宅緩和ケア充実診療所」の届出をしている医療機関は、新しい要件への適合を確認して、速やかに届出を更新する必要があります。
第二に、体制整備です。 施設基準が「緩和ケアの充実」から「重症在宅患者への充実した医療提供体制」に変わります。告示で詳細な要件を確認した上で、必要な体制を整えていきましょう。
第三に、これまで届出をしていなかった医療機関もチャンスです。 名称と要件が拡大されたことで、新たに対象となる医療機関があるかもしれません。自院の体制を見直して、チャレンジを検討してみてください。
今回の2026年診療報酬改定。
在宅医療に関しては、一言で言えば「質への回帰」です。
重症患者さんをしっかり診る。チームで支える。ICTで連携する。
そういう在宅医療機関が、正当に評価される時代がいよいよ本格化します。
私たちたんぽぽクリニックも、25年間大切にしてきた「患者さん中心の在宅医療」を、この追い風の中でさらに進化させていきたいと思っています。