著者:永井康徳
2026年診療報酬改定インパクトランキング、第3位を発表いたします。
このテーマは、改定以前に社会的な問題として大きく報道されてきました。まずはその背景から振り返りましょう。
背景と問題点
• 近年、末期がんや難病患者向けのホスピス型住宅・ホスピスマンションが全国で急増
• 隣接する訪問看護ステーションを活用し、医療保険の診療報酬を積み上げるビジネスモデルが展開
• 一部で不適切な運営が発生:儲かるから訪問するという本末転倒の行動が拡大
• 2025年2月、パーキンソン病専門の有料老人ホーム運営事業者が約28億円の診療報酬不正請求を認定
• ホスピス住宅最大手でも約6,300万円の実態なき請求が指摘
• 現場での不正行為の例:5分の訪問を30分と記録、一人訪問を二人と記録、医療的必要性がなくても機械的に1日3回訪問、医師の約4割が虚偽の病名を書くよう求められた経験あり
• 2026年1月から全国47都道府県でホスピス型住宅の訪問看護ステーションを対象に史上初の一斉調査を実施
今回の2026年診療報酬改定の最大の特長は、3つの措置が同時にしかも連動して導入されたことです。
2026年診療報酬改定の3つの措置
包括型訪問看護療養費の新設
高齢者住宅等に併設・隣接する訪問看護ステーションが重症利用者に24時間体制で頻回訪問を行う場合、1日あたりの包括報酬(何回訪問しても同じ点数)を新設。電子記録による実際の時刻記録が必須。
訪問看護管理療養費の再編
2日目以降の管理療養費が居住者人数と月間訪問日数による段階的評価に変更。居住者50人以上で月25日以上訪問すると管理療養費は約2,010円(以前の3,000円から3分の2に引き下げ)。大規模・高頻度になるほど単価が下がる構造。
同一建物訪問看護の適正化
20分未満の訪問は算定不可。同一敷地内の建物も同一建物としてカウント。実際の訪問開始・終了時刻の記録が義務化。
この3つが連動することで、ホスピスマンション+併設ステーションの出来高積み上げモデルに対して、包括化と管理療養費の引き下げ、短時間訪問の封じ込めという3方向からの圧力がかかる構造となりました。
現場での対応策
高齢者住宅運営事業者
出来高算定と包括算定のどちらが有利かを入居者の重症度に基づいてシミュレーション
訪問看護記録システムの改修
実際の訪問開始・終了時刻を電子的に記録することが義務化されるため早めの対応が必要
訪問パターンの根本的見直し
医療的必要性に基づいた訪問頻度への再設計
改定の意義
• この改定は在宅医療の原点に立ち返る好機
• 末期がんや難病の方が病院ではなく家に近い場所で最期を迎えられることは在宅医療が目指してきた姿
• 一部でビジネス的・経済的な過剰追求が入り込み、現場の看護師が記録の過酷さに苦しんでいた。勇気を持って告発した看護師たちが国を動かした。
• 訪問の回数や時間ではなく、その人の人生の最終章に本当に寄り添えているかが重要(Doingの医療ではなくBeingの医療の本質)
• 本当に重症で24時間対応が必要な患者への看護は引き続き適正に評価される。
• 真面目に取り組んでいる事業者にとっては制度が正常化した改定であり、在宅医療の本質「その人らしい最期を支える」という原点に立ち返る改定。