たんぽぽコラム

在宅医療の制度の知識

著者:永井康徳

  

第12回 たんぽぽ先生が選ぶ 在宅医療インパクトランキングトップ10【第6位】

2026年診療報酬改定インパクトランキング、第6位を発表いたします。


第6位 D to P with N オンライン診療への評価新設

「ディー・トゥ・ピー・ウィズ・エヌ」。聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれません。これは、Doctor to Patient with Nurseの略。つまり、患者さんのそばに看護師が同行し、医師がオンラインで診療を行うという、新しい診療形態です。
医師不足地域や通院困難な患者さんにとって、これからの在宅医療を大きく変える可能性を秘めた、非常に重要な改定項目です。それでは詳しく見ていきましょう。

1.D to P with Nとは何か
まず、「D to P with N」の基本構造を整理します。
従来のオンライン診療は、医師と患者さんが直接画面越しにつながる、いわゆる「D to P」が中心でした。しかし、高齢の在宅患者さんの場合、ご自身でタブレットを操作したり、症状を正確に伝えたりすることが難しいケースが少なくありません。また、医師が画面越しに見るだけでは、バイタル測定、創部の評価、処置などができないという限界がありました。
そこで登場したのが「D to P with N」です。「患者さんのお宅に訪問看護師が伺い、その看護師が医師とオンラインで接続し、医師は看護師を通じて、リアルタイムの映像と医療情報を得ながら診療を行う」というモデルです。
つまり──医師の「診る力」と、看護師の「触れる力・処置する力」を、オンラインで融合させるということなのです。

2.新設された点数
それでは、今回新設された具体的な点数を見ていきましょう。
まず基本となるのが、
「訪問看護遠隔診療補助料」265点 、訪問看護療養費においても「訪問看護遠隔診療補助加算」2,650円が新設されました。
これは月1回に限り算定可能で、対象となる診療形態は2つあります。

①同一医療機関の看護師等が患者宅を訪問し、医師がオンラインで診療を行うケース
②訪問看護ステーションの看護師等が、医師の指示に基づき患者宅を訪問し、医師がオンラインで診療を行うケース

つまり、医療機関所属の看護師でも、訪問看護ステーション所属の看護師でも、どちらでも算定できる仕組みになっているということです。
対象患者さんは、在宅療養を行っている方、または緊急に診療を要する方で、通院が困難な方。 ただし、医師または看護師の配置が義務付けられている施設に入所している患者さんは算定対象外。同一建物内で2人目以降は原則算定不可となっています。
ここは現場で混乱しやすいポイントなので、しっかり押さえておきましょう。

3.検査・注射・処置の評価
今回の改定でさらに画期的なのは、D to P with Nのオンライン診療中に行う検査・注射・処置にも、それぞれ実施料が新設されたことです。
具体的には──
 • 看護師等遠隔診療検査実施料:1種類の場合100点、2種類以上の場合150点
 • 看護師等遠隔診療注射実施料:100点
 • 看護師等遠隔診療処置実施料:1種類の場合100点、2種類以上の場合150点
これらを組み合わせると、補助料265点に加えて、最大で400点が上乗せされ、合計665点プラスαとなります。

ポイントは、定期的な訪問看護でも、また予定された訪問看護がない日でも算定可能だということ。これは大きいですね。たとえば、夜間に発熱して急遽訪問が必要になった場合でも、看護師が駆けつけて医師がオンラインで診療し、必要な処置を行えば、しっかり評価される。緊急対応の質と経済性、両方を担保する設計になっているわけです。

4.想定されるユースケース
では、具体的にどんな場面で活用できるのか。今回示されている代表的な3つのユースケースをご紹介します。


1.「心不全管理」 遠隔でのバイタルモニタリングを行いながら、医師が看護師を通じて全身状態を評価し、利尿剤の調整など投薬指示をリアルタイムで行う。再入院予防に直結します。

2.「褥瘡ケア」 看護師がカメラで創部を映し、医師が画面越しに評価。深さや感染兆候を判断し、処置内容を指示する。専門医の知見を、現場の看護師の手でその場に届けることができます。

3.「がん緩和ケア」 疼痛コントロールの調整や、患者さん・ご家族への心理的サポート。終末期において、わざわざ通院していただく負担を減らしながら、きめ細やかな対応が可能になります。


いずれも、従来は「医師が現地に行かなければならなかった」場面を、看護師との連携でカバーできるようになる、ということです。

5.在宅医療実践者としての視点
ここからは、私たち在宅医療を実践する立場からの考察です。
この改定が持つ意味は、3つあります。

1.医師不足地域における在宅医療アクセスの確保
医師が物理的に訪問できない離島や山間部、医師偏在地域でも、看護師の機動力と医師のオンライン診療を組み合わせれば、質の高い在宅医療を届けられる。これは地域医療の救世主になり得ます。

2.医師の生産性向上
1日に訪問できる件数には限界がありますが、オンラインを併用すればより多くの患者さんを診ることが可能になります。移動時間の削減は、結果的に医師の働き方改革にもつながります。

3.訪問看護師の役割拡大と評価
看護師の専門性が、点数として明確に位置づけられた意義は大きい。多職種連携の中で、看護師の存在価値がより一層明確になる改定だと言えます。

ただし、課題もあります。通信環境の整備、機器の標準化、そして医師と看護師の役割分担の明確化。これらを丁寧に積み上げていく必要があります。

6.終わりに
「D to P with N オンライン診療の評価新設」、 これは単なる点数の追加ではなく、在宅医療における医師と看護師の協働モデルを、制度として正式に位置づけた歴史的な改定だと、私は捉えています。
通院困難な方が増え続けるこれからの時代、この仕組みを上手に活用していくことが、在宅医療の質と持続可能性の両立につながっていくはずです。

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