たんぽぽコラム

在宅医療の質を高める

著者:永井康徳

  

第23回 緩和ケアと在宅医療の導入時期は?

50才代胃癌末期の女性の訪問診療の依頼がきました。
お腹に水も溜まり、食事量も低下し、通院も困難であることから、在宅医療での緩和ケアの依頼でした。準備を進めるなかで、最終的には抗癌剤治療を継続することになり、まだ緩和ケア導入の時期ではないと病院主治医が判断し、導入は見送りとなりました。

国は、「がん対策推進基本計画」において、「緩和ケア」はがん患者とその家族が可能な限り質の高い治療・療養生活を送れるように、身体的症状の緩和や精神心理的な問題などを援助するものであり、癌の治療終了後に始まるのではなく、「がん」と診断された時から始まるものであると定義しています。

在宅医療も治療ができなくなった時から始めるのではなく、通院が困難であれば、専門医への病院受診と並行して、行うことが可能なのです。医療は治すためだけにあるのではなく、いつか必ず訪れる死に向き合い、亡くなるまでどう生きるかを支援する「支え、寄り添う医療」があることをまずは医療者が認識することが大切ではないかと強く感じました。

関連動画 緩和ケアと在宅医療の導入時期は?