たんぽぽコラム

在宅医療の質を高める

著者:永井康徳

  

第38回 理事長永井から見学者の方に伝えたい10ヶ条 PART2

ゆうの森には、全国からたくさんの見学者が来られます。見学者の方に永井から伝えたい十ヶ条をお話しさせて頂きます。

【PART2 第6ヶ条~第8ヶ条】

第6ヶ条 疲弊しない24時間体制システム ~たんぽぽ方式~
皆さんのクリニックでは、訪問診療に同行者はついていますか?診療の同行者を「荷物持ちや車の運転手」のように思っていませんか?都会の訪問診療専門クリニックでは、医師のみが一人で訪問しているクリニックもあれば、PA(フィジシャン・アシスタント)と呼ばれる看護師以外の専門の同行者を養成して一緒に訪問する所もあるようです。
「訪問診療の同行者をどうするのか?」というのは、実は事業ビジョンに直結する重要な課題です。一人の医師が、他事業所や他職種の力を借りながら自分のできる範囲の在宅医療を行うのか、複数医師体制で365日24時間しっかり対応する在宅医療を目指すのかで、診療同行者の有無や職種は異なってきます。前者の場合、同行者なしで単独で訪問診療する医師も多いのですが、後者を目指すなら、同行者が担う役割を深く把握し、その役割を担える職種や採用基準まで考えておいた方がいいでしょう。
当院では開業以来、一人医師だった時代も含めて、診療同行者は看護師です。私は、自分一人で24時間対応を何年も続けるのは不可能だと考えていたので、当番ができる看護師を採用して診療に同行してもらい、患家からの電話に最初に対応するファーストコールの対応を任せてきました。事務員による同行もトライしたことがありましたが、当院は重症患者が多く、診療時に看護師の医療補助を必要とするケースが多いため、最終的に同行者は看護師となりました。当院の同行看護師には、主に5つの役割があります。訪問診療に同行する看護師の5つの役割には、以下のものがあります。
 ①診療の補助
 ②診療の効率化
 ③情報の共有
 ④患者マネジメント
 ⑤医療の質の維持(当番体制の維持と診療のチェック)
当院で診療に同行する看護師は、自分たちが在宅医療の質を維持していると自負しています。

第7ヶ条 医療者の無知は罪 全国在宅医療テスト&在宅医療の5つの呪文
開業の翌年から職員向けに在宅医療の制度に対するテストを実施してきました。テストを開始した頃は職員の理解も得られず、不安や反対の意見も多く、自分たちにテストをするのかと憤慨してテストを突き返す職員さえいました。しかし、そのような職員こそ必要な知識がない職員でした。最初は私自身がテキストを作成し、手作りのテストを作って職員に実施してきましたが、2009年からは全国の医療機関からの要望もあり、全国の医療機関や事業所に公開して参加枠を広げ、「全国在宅医療テスト」を無料で実施してきました。
その後、全国在宅医療テストは、北海道から沖縄まで全国から参加されるようになり、2023年度は約3,000人が参加されるまでに規模が拡大しています。毎年、事業所単位で参加されるケースも多く、年に1回在宅医療制度の知識を勉強する機会を設けることで、患者をマネジメントする知識の習得に役立っています。「知識を知らなくて当たり前」の組織から「知識を知らないと恥ずかしい」という組織に変革する事ができれば、在宅医療の質を高める人財を育成できるのではないかと考えています。

第8ヶ条 人財を集める方法
「たんぽぽ流」良い人材を集めるための取り組みです。人材が集まってくるためには、3つのポイントがあると思います。

①良い活動をして情報発信する
食支提など患者や家族にとってプラスとなる活動は採算度外視で行い、自院のウェブサイトやSNSで積極的に情報発信している。
②疲弊しないシステムを確立する
4人で夜間対応当番を回すことで、月~木曜は週1日、週末(金~日曜)は月1回だけ担当すればよく、当番日以外はゆっくり休める「たんぽぽ方式」を医師・看護に導入した。
③教育研修機能
内容を具体的に紹介することで、活動の背景にある理念に共感する人材を集められる教育研修機能を充実させる。
学会や研修会の参加費用を助成するだけでなく、定期的に勉強会を開催し、院内で学べる仕組みをつくっている。「ここに来たら学べる」環境をつくることで、向上心のある人材を集められる疲弊しない当番システムを構築する。

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