開業した2000年は丁度介護保険制度がスタートした年です。在宅医療を取り巻く制度は複雑で、診療報酬のみならず介護報酬やさらには福祉制度まで知る必要がありました。多職種での連携を深めるためには、共通言語としての制度への理解が必要でした。
ただ、理解を深めるため知識を得なければならない、制度を勉強しなければならないと思っても、開業間もない状況においては、日々の業務をこなすので手いっぱいで、勉強どころではありません。そんなある日、当方の知識不足からケアマネジャーに迷惑を掛けてしまうという出来事がありました。
これはもう待ったなしで勉強するしかなく、そこで理事長が「テストをして、その受験勉強を通して知識や制度への理解を深めよう」という、忙殺される職員には鬼のような提案がありました。皆も「勘弁してほしい!」と言いつつ、一方では勉強しないと不味いという気持ちもあり、しぶしぶながらテストを受入れ、勉強することとなりました。
そのようにして毎年1回テストを実施し、徐々に制度への理解や知識を深めていったのです。
それから5、6年して、このテストのことを全国の親しい在宅クリニックの皆が知ることとなり、受験を懇願されたことから、勝手ながら「全国在宅医療テスト」として、広く受けて頂くこととしました。それまでは内々で書籍のコピーで勉強していたのですが、これを機に100頁にものぼるテキストを作り、皆さんにテストのテキストとしてお渡ししました。(これがその後発展し、現在では多くの皆さんに利用頂いている「たんぽぽ先生の在宅報酬算定マニュアル」となりました。)
このテストは、知識の優劣を競うためのものではありません。日々の忙しさに追われる中で、あえて「テスト」という場を設けることで、自発的に学ぶきっかけを作ることが真の目的です。
「勉強しよう!」の掛け声だけではなかなか組織は動きにくいのですが、テストと云うツールを通せば、取り組みやすく、皆で学ぼうとする組織に成長していけるのではないかと思います。
・多職種で挑む ── 医師、看護師、事務職、ケアマネジャー、リハビリ職など、あらゆる職種が参加しています。
・実践的な内容 ── 単なる暗記ではなく、実際のケースでどう判断すべきかを問う「現場で役立つ」問題構成です。
・無料での提供 ── 在宅医療の裾野を広げたいという想いから、運営はすべて当法人で行い、参加は全て無料としています。
現在では、北は北海道から南は沖縄まで、3,500名を超える方々にご参加いただき、皆さんのお話から推察するに、単にテストを実施するというだけでなく、医療機関や介護事業所が「学ぶ組織」づくりのツールとして活用頂くケースが増えています。
事前の勉強会で知識を深め、受験後の解答・解説を使って復習会を開く。そんなプロセスを経て、組織全体の連携力が強化されていく様子が全国から報告されています。
このテストは、在宅医療の発展という大きな流れの中では、小さな一歩かもしれません。また制度への理解は医療や介護の本質へのアプローチではないかもしれません。しかし、目の前の患者様を支える一人ひとりの専門職が、学び、成長しようとする姿勢は、患者・家族への「安心」の源泉となります。「制度を学び、自信を持って現場へ。」私たちは、この活動を通じて、全国の在宅医療に関わる皆さまと共に歩み続けたいと願っています。