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90歳のキョウコさん(仮名)は市内の急性期病院の循環器内科から紹介された女性患者さんです。心不全が増悪して病院の主治医からは入院を勧められたのですが、キョウコさんは積極的な治療を希望されず、娘さん家族と暮らす自宅での療養を選択されたのでした。キョウコさんは心不全だけでなく、慢性腎不全や大動脈狭窄症も併発し、少し動くと頻脈や息切れがするものの、身の回りのことは自分ででき、自宅内なら歩行車を押して移動することもできます。娘さんが仕事で留守の時には、娘の助けになればと台所で簡単な調理もされていました。 認知機能に問題もなく、私たちが訪問すると「寝たままでは失礼なので」と、ベッドから起き上がって居間まで移動し、椅子に座って迎えてくれるような気配りをされる女性でした。また、「この人」と思った医師をとことん信頼し、慕うという可愛らしい一面もある方で、急性期病院の主治医と私はキョウコさんのお気に入りだったようです。病院主治医のことをよく話題に出しては褒めていましたし、訪問診療でも「永井先生でないと意味がない」と、私が休みの日に代わりに訪問した医師が処方した薬は飲まないほどの徹底ぶりでした。 初回の訪問診療時にキョウコさんの人生会議を行いました。「今は状態が安定していますが、腎機能が悪化した時や食べられなくなった時にはどうされたいと思っていますか?」と尋ねたところ、キョウコさんは症状が悪化してもなるべく入院はしたくない、腎不全が進行しても透析は希望しない、食べられなくなっても点滴等はせずに自然なままで看て欲しいと言われたのでした。これらのことはカルテに記入しましたが、この希望はあくまで今の時点のもの。心身の状態が変化したらその都度、人生会議を開いてキョウコさんとご家族の考えや希望を伺うことが大前提でした。
第34回 終末期の意思決定支援 自分らしい最期とは?
第33回 本人への告知シリーズPart3「本人へどう告知するのか?」
第32回 本人への告知シリーズPart2「患者本人の思いを置き去りにしない告知」
第31回 本人への告知シリーズPart1「本人に告知しなくていいのか?」
第30回 息を引き取る瞬間を誰かがみていなくてもいいんですよ【後半】
第29回 息を引き取る瞬間を誰かがみていなくてもいいんですよ【前半】
第28回 どんなに覚悟していても、気持ちは揺れるもの ~身内の看取りで学んだ意思決定支援~
第27回 納得できる過程とは?
第26回 看取りのプロデュース
第25回 なぜ「自宅での看取り」が普及しないのか?
第24回 楽なほうがいいか、1分1秒でも長く生きるほうがいいか
第23回 告知に向き合う
第22回 胃ろうをするか否か
第21回 どんな状態でも家に帰ることはできます
第20回 看取り支援は百人百様 ~柔軟に対応を~
第19回 わがままな患者さんを許容できるか?
第18回 自然に逝くということ
第17回 家で亡くなったら警察沙汰!?
第16回 意思決定支援に重要な5つのポイント
第15回 死に向き合う
第14回 納得できる最期とは何か
第13回 亡くなる前に点滴はいらない
第12回 亡くなる瞬間はみていなくてもいい
第11回 家で臨終を迎えるとき
第10回 大切な人の『死に目』に会うということ
第9回 最期の瞬間に医師はいらない!
第8回 最期の3日間
第7回 埼玉県医師銃撃事件に思う
第6回 「亡くなるまで食べる」ことの意味
第5回 点滴をする選択、しない選択
第4回 一人暮らしでの看取り
第3回 本人の気持ちに思いを馳せる
第2回 ブラックジャックの名言
第1回 天寿と長寿
おうちでの看取り
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